法人保険は、契約者や保険料負担者を法人とした生命保険の総称です。
保険金や給付金の受取人も法人になるケースが一般的で、企業を取り巻くリスクに備えるための保障を確保します。
また法人保険は、節税にも活用できることがあります。
今回は、法人保険を活用した節税について解説します。
法人保険を活用した節税の仕組み
法人保険にはさまざまな種類があり、それぞれ節税の仕組みが微妙に異なります。
まず養老保険は、従業員の福利厚生として加入することで、支払保険料の半分を損金として計上できます。
年金保険も同じく福利厚生であり、支払保険料の1/10分を損金計上することが可能です。
また長期定期保険、逓増定期保険にも節税効果が期待できます。
これらの保険の解約返戻率が70~85%の間であれば、保険期間開始~前半4割期間の間は保険料の40%を、それを過ぎた場合は全額を損金として計上できます。
ちなみに医療保険やがん保険は、短期払いの場合、一人当たり年間支払保険料30万円までは、全額損金計上が認められています。
そのため、金額に制限はあるものの、節税対策として活用できます。
法人保険の節税効果は少ない?
法人保険では、前述の通り保険料を損金計上することで、法人税の節税を行えます。
ただし法人が保険金や解約返戻金を受け取る際は、法人税の課税対象になるため、注意が必要です。
受け取った保険金や解約返戻金は、保険金や解約返戻金から保険料積立金、配当積立金を除いた全額を雑収入として益金に算入しなければいけません。
そのため課税対象となり、税負担が増大する可能性があるため、実質節税効果はかなり少なくなってしまいます。
2019年以前は、貯蓄性のある法人保険で保険料の全額、1/2、1/3を損金算入できました。
また、保険料の8~10割以上の解約返戻金がある保険商品も存在しました。
しかしこれらの特性を利用し、行き過ぎた節税対策を行う企業が多く見られたため、金融庁は保険料の損金算入のルールを見直すことになったのです。
そしてルールが見直された結果、契約期間の経過に伴って損金算入できる割合は増加したものの、目先の期間での節税効果は見込めなくなりました。
法人税が下がれば節税効果は上がる?
将来的に法人税率が低くなれば、そのときまで課税の繰り延べをした方がお得になります。
しかし、こちらの効果は数%の話です。
その数%のために、解約返戻金が低い法人保険に加入するなどすることは本末転倒です。
節税額よりも、元本の目減り額の方が圧倒的に大きくなります。
企業における他の節税対策について
企業が法人税を節税する方法としては、法人保険の加入以外にもさまざまな方法があります。
代表的な方法としては、役員報酬を増やすということが挙げられます。
役員報酬は賞与も含め、一定の要件を満たせば損金として計上できます。
現在の役員報酬の増額、あるいは新たな役員の追加によって役員報酬を増額すれば、課税所得を軽減できます。
ただし役員報酬を増額すると、役員個人の個人税や住民税、社会保険料の金額が上がるため、トータルの納税額はかえって増えてしまうこともあります。
そのため、報酬額は税理士などに相談し、適正な金額とすることが大切です。
役員報酬の変更が事業年度開始から3ヶ月以内であれば、全額損金として計上できます。
ちなみに、法人名義で車を所有することや、経営者の自宅を社宅にすることなども、節税対策の一つです。
まとめ
法人保険は、ある程度節税効果を持っていますが、それを主な目的として加入することはおすすめできません。
現在は保険商品のルール変更により、それほど大きな節税効果が見込めなくなっています。
また本来節税というのは、支払う税金を実際に減らすことを意味しています。
法人保険の場合、法人税は減っておらず、支払うタイミングを将来に先送りするだけであるため、企業は他の節税対策も検討すべきです。