法人保険に加入すれば、企業は経営者に万が一のことがあったり、事業活動で失敗したりしても、損失をカバーすることができます。
また法人保険は従業員の福利厚生としても活用できますが、加入するにあたっては注意すべき点もあります。
今回は、法人保険への加入におけるデメリットについて解説します。
法人保険に加入するデメリット5選
法人保険は、企業にとってなくてはならない備えですが、加入することによって以下のデメリットにつながることもあります。
・キャッシュフローが悪化することがある
・解約返戻金に依存すると資金計画に柔軟性がなくなる
・解約時期によっては元本割れが起こる
・節税効果が少ない
・保険金の損金算入が認められないことがある
各デメリットについて詳しく説明します。
キャッシュフローが悪化することがある
法人保険に加入すると、毎月保険料の支払いが発生します。
こちらの負担が大きいと、キャッシュフローを悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
ちなみに、企業は解約返戻金の一部を保険会社から借入できる契約者貸付制度が使える場合もあります。
借りられる金額の上限は解約返戻金の7割ほどですが、これまで積み立ててきた金額を基に借入を行うため、審査はありません。
そのため、法人保険は保険料が発生しますが、万一の際の借入にも活用できます。
解約返戻金に依存すると資金計画に柔軟性がなくなる
積立型の法人保険の場合、途中解約を行うと解約返戻金が受け取れます。
こちらを退職金などに活用しようと考えている企業もあるかと思いますが、解約時期次第で解約返戻金の返戻率は変動します。
また企業はせっかくなら、もっとも返戻率の高いタイミングで解約したいと考えるかもしれませんが、そうすると限られた時期にしか利用できなくなります。
つまり突発的に必要になる資金には対応できず、資金計画に柔軟性がなくなってしまうということです。
解約時期によっては元本割れが起こる
先ほども触れたように、法人保険の解約返戻金は、解約時期によって返戻率が変わります。
もちろん、払い込んだ保険料よりも受け取れる解約返戻金が少ない、いわゆる元本割れが起こるリスクもあります。
解約返戻金がもっとも上がるタイミングは保険商品によって異なりますが、数年から数十年はかかるケースが多いです。
契約して2~3年程度で解約したり、返戻率がピークを過ぎてから解約したりすると、元本割れが起こる可能性は高くなります。
節税効果が少ない
法人保険には、節税効果が少ないというデメリットもあります。
こちらは2019年の税制改正が関係しています。
法人保険では、課税の繰り延べを行うことができます。
課税の繰り延べは、税金の支払いを将来に延期することであり、主に生命保険の解約返戻金や死亡保険金などが対象になります。
しかし、2019年10月の税制改正では、生命保険の損金算入のルールが見直されています。
その結果、これまで支払った金額を損金算入できていた保険商品についても、一部しか損金算入できなくなりました。
保険金の損金算入が認められないことがある
法人保険に加入する際には、必ず福利厚生規程を作成しなければいけません。
なぜなら、従業員の福利厚生の充実を目的に法人保険に加入する場合、福利厚生規程がないと保険金の損金算入が認められない可能性があるからです。
また法人保険の解約返戻金を役員や従業員の退職に充てる場合、適切なタイミングで退職金が支払われたことを証明するために、退職金規定の作成も求められます。
まとめ
法人保険は企業のあらゆるリスクに備えられるものですが、加入することでキャッシュフローが悪化したり、元本割れが起こったりする可能性があります。
また解約返戻金や節税効果ばかりを目当てにしていると、思うような恩恵を受けられないことも考えられるため、注意してください。
もちろん、加入する際はさまざまな商品をチェックし、自社との相性が良いものを選ぶのも大切です。