近年は、従業員の退職金を法人保険で用意する企業が増加しています。
具体的には、毎月一定額を支払い続けることで、退職金に充てる資金を確保するという仕組みです。
退職金制度は大事な福利厚生ですので、基本的には導入することが望ましいです。
今回は、退職金を法人保険で用意することのメリットを中心に解説します。
退職金を法人保険で用意するメリット
退職金を法人保険で用意するメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。
・2種類の退職金を用意できる
・計画的に資金を貯められる
・死亡保険金の満額を遺族に支払える
・契約者貸付制度を利用できる
各メリットについて詳しく説明します。
2種類の退職金を用意できる
法人保険を活用すれば、定年退職時などに支払われる勇退退職金、従業員が在職中に亡くなったときに支払われる死亡退職金の両方を用意できます。
具体的には、死亡保険金を死亡退職金に、解約返戻金もしくは満額返戻金を勇退退職金に回すことが可能です。
計画的に資金を貯められる
法人保険に加入することで、計画的に退職金を用意できます。
なぜなら、こちらの資金は預金で積み立てる場合とは違い、運転資金に流入しにくいからです。
つまり一定額を継続してかけ続けることにより、他の資金と区別して、将来の退職金原資を確実に貯められるということです。
死亡保険金の満額を遺族に支払える
法人保険で退職金を用意する場合、死亡保険金の満額を遺族に支払えます。
死亡保険金の金額は、仮に加入期間が短くても満額が支払われるため、残された従業員の家族にとっては大事な保障です。
特に運送業や製造業など、少しのミスが大事故につながってしまうような業種では、従業員を守る意味でも法人保険に加入しておく必要があります。
ちなみに、死亡退職金は1,000万円を超えるケースが多いため、生命保険に加入していると大幅に企業の負担が軽減されます。
契約者貸付制度を利用できる
法人保険への加入期間内であれば、解約返戻金の9割程度の金額内で、無担保・無審査の貸付である契約者貸付制度を利用できます。
つまり退職金を法人保険で用意すれば、別の理由で企業が経営危機に陥った際などにも、緊急で資金を準備できるということです。
ちなみに契約者貸付制度による貸付は、融資であるため当然利子が発生し、解約返戻金も借りた金額分だけ減少します。
しかし、解約までの貸付金を全額返済していれば、元の金額分の解約返戻金を受け取ることが可能です。
退職金を法人保険で用意する際の注意点
退職金を法人保険で用意する場合、契約初期に被保険者である従業員が退職してしまうと、企業はその従業員にかけた保険を解約しなければいけません。
このような場合、解約返戻金が支払われないか、もしくは支払った保険料の総額よりも相当低い額しか支払われないことになります。
そのため、従業員の平均在籍期間が短く出入りが激しい企業は、こちらの方法を取ることで損をする可能性があります。
また退職金を法人保険で用意する方法が割に合わないからといって、退職金制度のような福利厚生は、一度導入したら基本的には撤廃するのが難しいです。
急に退職金制度がなくなると、既存の従業員が企業に対し、不安や不信感を抱く原因にもなりかねないからです。
企業は導入するタイミングを考慮し、少なくとも既存の従業員がすべて退職金を受け取れるまでは、制度を継続させられるようにしなければいけません。
まとめ
法人保険を活用して退職金を確保するという方法は、多くの企業で導入されてきた実績があります。
そのため、企業にとってメリットの大きい方法であることは確かです。
ただし、どのような企業にとっても適している方法なのかというと、決してそういうわけではありません。
また導入のタイミングを間違えると、事業に支障をきたしたり、従業員の離職が進んだりする可能性もあるため、注意してください。