日本の企業では、元々厚生年金基金に加入して退職金を支払っていることが多かったのですが、近年は退職金ではなく、企業型確定拠出年金に加入する企業が増えています。
今までは退職金制度があって安心していたのに、企業型確定拠出年金に変更されたことで損をしたと思う人もいるでしょう。
しかし、本当に損なのでしょうか?
厚生年金基金が成り立たなくなった原因は?
多くの企業は、元々厚生年金基金に加入していました。
厚生年金基金は、1966年にスタートした制度です。
通常の厚生年金の保険料の一部を利用して、企業の積立金と合わせて運用するというものでした。
高度経済成長期という好景気の中で誕生した制度で、運用によって増えた部分を社員の老後の資金として年金に上乗せするというスタンスであった制度なのです。
借りたお金には5.5%の金利がつくのですが、当時は金利以上に利益を得られたのです。
しかし、バブル崩壊に伴って景気も落ち込み、運用も当初の予定通りにはいかなくなりました。
結果として、資金を返済できない基金は強制的に解散させられてしまい、自主的に脱退する企業も増えていき、確定拠出年金や中小企業退職金共済へと切り替えるようになったのです。
厚生年金基金の場合は、会社が手続きをすべて行っていたため、任せっきりにできたのですが、確定拠出年金の場合は任せたままにはできません。
運用商品などは、自分で選ぶ必要があるのです。
切り替えに当たっては、説明会が開催されて内容を聞き、同意書にサインをする必要があるため、勝手に切り替わることはありません。
しかし、ほとんどの人は説明だけでは理解できず、損をしている気分になっているのです。
ただし、先ほども言ったように厚生年金基金は今までの方法では立ち行かなくなっているため、1996年には1883基金あったのが2014年以降は実質廃止となり、令和元年時点で8基金しか残っていませんでした。
確定拠出年金は損?
確定拠出年金は、厚生年金基金と同じく国民年金、厚生年金にプラスして支払われる年金です。
厚生年金基金が実質廃止となったことで、上乗せ部分の年金を維持するために確定拠出年金への切り替えが必要となったのです。
厚生年金基金に残っている上乗せ分が基金に残っていないことがあるため、今までの上乗せ分はなくなっているケースも多数見られます。
上乗せ分がなくなったことを、切り替えたことによる損失と考える人もいるでしょう。
しかし、そもそも切り替えなかったとしても支払うお金がない以上、切り替えたことによる損失ではありません。
そもそも上乗せ分があるかは基金によって異なるので、一度調べてみてください。
確定拠出年金は、企業で導入した場合は企業型DCとなり、企業拠出があります。
企業拠出には、企業が拠出する額が限度額となるマッチング拠出と、企業の掛け金に加えて個人で企業の掛け金との合計が55,000円までになるよう拠出できる選択制があります。
マッチング拠出は、個人での負担がないものの企業拠出以上に拠出したい場合に不便です。
また、自分で支払っているわけではないので、社会保険料の減額はありません。
選択制は、自分で追加して拠出できるため、老後の備えがより手厚いものとなるでしょう。
所得税や住民税の減額が受けられ、社会保険料の算定基板からも外れて社会保険料を削減できます。
まとめ
厚生年金基金から確定拠出年金への切り替えは、戸惑う人も多いでしょう。
しかし、厚生年金基金はすでに成り立っていない制度であり、すでに実質廃止されているため、脱退する必要があるのです。
代替手段として択ばれるのが、確定拠出年金です。
確定拠出年金は、企業が拠出する掛け金以外は拠出できないマッチング拠出と、合計55,000円までは拠出できる選択制があるので、どちらが選ばれているか確認してください。