公的医療保険は、病気やケガをしたときの医療費の一部を公的機関が負担する制度です。
日本は国民皆保険制度を採用し、全国民に加入が義務付けられています。
しかし、すべての治療費などについて公的医療保険でカバーできるわけではありません。
今回は、公的医療保険の対象外である自由診療、先進医療について解説します。
自由診療の概要
自由診療は、治療にかかる費用をすべて患者さんが負担するというものです。
保険診療は3割や1割など、治療費の一部を負担しますが、自由診療は患者さんの10割負担になります。
また、主な自由診療には以下のようなものが該当します。
・高精度放射線治療SBRTによる巨大肺腫瘍の治療
・自家がんワクチン療法
・免疫チェックポイント阻害薬
・エフェクターT細胞療法
・遺伝子療法
・美容整形 など
自由診療が公的医療保険の対象外になる理由
自由診療が公的医療保険でカバーできない理由には、治療内容や使用する薬が関係しています。
自由診療では、厚生労働省が承認していない治療を行ったり、薬を使用したりします。
つまり、科学的根拠の少ない特殊な医療を行うことから、公的医療保険が適用されないということです。
また、自由診療の金額は、保険診療と違って各医療機関で自由に設定できます。
場合によっては、医療機関AよりもBの方が、明らかに治療費が高いということも起こり得ます。
ちなみに、保険診療と自由診療を併用するケースは混合診療と呼ばれ、こちらはそもそも日本では原則として禁止されています。
混合治療では、保険診療部分も自由診療と同じ扱いになり、医療費のすべてを患者さんが負担しなければいけません。
ただし、以下のようなケースは保険診療部分が3割負担、自由診療部分が10割負担という混合診療が認められています。
診療の種類 | 例 |
評価診療(将来的に公的保険給付の対象となることが見込まれる療養) | 先進医療、医薬品・医療機器の治験 |
選定診療(患者の快適性・利便性、医療機関や医療行為の選択に関する療養) | 差額ベッド代、時間外診療、大病院の初診・再診 |
先進医療の概要
先進医療は、公的医療保険制度に基づく評価療養のうち、厚生労働大臣が定める高度な医療技術です。
先進医療の技術数は、2024年1月1日時点で80種類に上ります。
先進医療Aは、未承認等の医薬品や医療機器の使用を伴わないもので、先進医療Bは使用を伴うものです。
また、先進医療を実施する医療機関は、医療技術ごとに定められています。
こちらは保険給付の対象にするべきかどうかの評価をするため、医療機関への定期的な報告を求めているからです。
ちなみに先進医療のそれぞれの医療技術は、有効性や安全性が確認できて公的医療保険の対象になれば、先進医療から外れます。
さらに、新たに先進医療に加わる医療技術もあり、常に内容は変動しています。
先進医療も公的医療保険の対象外
厚生労働大臣の認可を受けている先進医療も、自由診療と同じく公的医療保険の対象外です。
そのため、患者さんが治療費の全額を負担しなければいけません。
ただし、先進医療を受けるときにかかる診察・検査・投薬・入院料等の費用には、健康保険が適用されます。
また先進医療にかかる技術料は、治療の種類によってさまざまですが、かなりの高額になるケースが多いです。
例えば、がんの治療に使用される重粒子線・陽子線を用いた先進医療の場合、200~300万円の治療費がかかります。
まとめ
日本の公的医療保険では、自由診療や先進医療にかかる費用をカバーすることができません。
また病気・治療ではない施術にかかる費用、診断書・証明書の作製費用などについても、公的医療保険の対象外になります。
そのため将来の費用負担が心配な方は、少しでも経済的な負担を減らすために、民間の医療保険に加入しておくことをおすすめします。