変額保険は、運用成績によって受け取る保険金や解約返戻金などの額が変わる保険です。
他の保険とはかなりの違いがある変額保険は、資産運用をしたい方にも人気があるのですが、内容をしっかりと理解していない人からの苦情やトラブルも多いのも特徴です。
変額保険のメリット・デメリットについて解説します。
変額保険のメリット
変額保険は、通常の生命保険と比べて安定性がないため、いざという時の備えには不安、という人もいます。
しかし、変額保険には様々なメリットもあるため、多くの人に選ばれているのです。
変額保険のメリットについて、解説します。
運用成績によって保険金が増える
変額保険のメリットとしてまず出てくるのが、運用状況で受け取ることができる保険金や解約返戻金の額が変わるため、他の保険よりも多く受け取ることができる可能性がある、という点です。
変額保険の運用は、他の保険の運用をする一般勘定と区別された、特別勘定で行われます。
特別勘定では、リスクが比較的あるもののリターンにも期待できる、投資信託などで資産を運用していきます。
一般勘定の場合、比較的安定したリターンがある、公社債などを中心に運用します。
公社債は、マイナスになる可能性はほぼ無いので元本が保証されているものの、リターンもごくわずかで利率は最初に定められています。
特別勘定では、保険会社がいくつかの選択肢を提示します。
投資信託の種類などで分けられることが多いため、自分の資産運用の方針に合わせた運用方法を選ぶことができるのです。
運用成績が好調で資産を増やすことができれば、保険金や解約返戻金は基本保険金額を上回ることになるのです。
運用を行うのは保険会社の運用担当の専門家なので、自分で投資するよりも安心できるでしょう。
下限が定められている
また、死亡時や高度障害状態時に支払われる死亡保険金・高度障害保険金については、下限の金額が決められています。
運用成績が好調なら増えるのですが、いくら運用成績が悪かったとしても基本保険金額が最低保証金額となり、下回ることはないのです。
つまり、実際に受け取ることになる保険金は、基本保険金額に変動保険金額を加えた金額となります。
変動保険金額は、運用の結果得た損益によって決まります。
生命保険料控除を受けられる
変額保険は、生命保険料控除の対象となる保険なので、所定の条件を満たしていれば所得税では最大で4万円、住民税では最大2万8千円の所得控除が年末調整や確定申告で適用されます。
一般生命保険料の控除額は、年間払込額によって異なります。
住民税の控除額は、年間払込保険料が1万2千円以下であれば、保険料全額が控除されます。
1万2千円を超えて3万2千円以下であれば、払込保険料の半分に6千円を加えた額が控除されます。
3万2千円を超えて5万6千円未満であれば、払込保険料の4分の1に1万4千円を加えた金額が控除されます。
5万6千円を超えていれば、一律で2万8千円が控除されます。
年間5万6千円以上となるのは、月に約4千7百円以上の保険料を支払っている場合なので、2万8千円控除される人が多いでしょう。
所得税の控除は、年間払込保険料が2万円以下の場合は全額です。
2万円を超えて、4万円以下の場合は払込保険料の半額に1万円を加算した額が控除されます。
4万円を超えて8万円以下の場合は、払込保険料の4分の1に2万円を加算した額が控除されます。
8万円を超えると、一律で4万円が控除されます。
インフレリスクに強い
物価が上がるインフレ時は現金の価値が下がってしまい、資産価値も目減りしてしまいます。
例えば、現金で1000万円持っている状態でインフレになり、物価が2倍となった場合は所持している1000万円が以前の500万円と同じ価値になるのです。
インフレなんて、そうそう起こるものではないと思っている人もいるでしょう。
しかし、近年でガソリンや灯油の価格が著しく高騰しています。
およそ25年前のレギュラーガソリンの価格は、100円未満でしたが、現在は2倍近くにもなっているため、ガソリン価格においては25年前と比べて資産価値が約半分になっているということになります。
食料品などの価格も、以前と比べてかなり上がっているものがあります。
現在の価格の上昇には景気の良さだけではなく、他の要因もあります。
しかし、実際に物価が高騰していれば、インフレと変わらないのです。
変額保険で資産運用をすると、インフレに合わせて資産価値も上がっていくため、対策になります。
インフレは一時的に景気が上昇している時に起こりやすいので、特別勘定の運用成績も好調になります。
インフレリスクに対抗するには、物価上昇率に負けないように資産を増やしていく必要があります。
定額保険では保険金などが決まっているため、増やすことはできませんが、変額保険なら資産価値を増やすことが可能です。
定額保険の場合、支払う保険料も受け取る保険金も最初から額が決まっています。
そのため、インフレの対策にはなりません。
変額保険は満期保険金などが変動するため、対策として利用できます。
税金面でメリットがある
同じ資産運用でも、株式投資や投資信託などであれば、運用したことで発生した収益に対しては税金がかかってしまいます。
しかし、変額保険は運用している間、税金がかからないというメリットもあります。
ただし、受け取りの際に利益がある場合は税金がかかることもあるのですが、その際は税負担の軽減を受けられます。
税負担の面でも、大きなメリットがあるのです。
資産運用をするには、証券会社の口座を開設する必要があると思っている人もいるでしょう。
しかし、変額保険の場合は株式や投資信託などで運用するのですが、わざわざ証券口座を開設する必要はありません。
手間がかからないのも、大きなメリットでしょう。
変額保険のデメリット
変額保険には、様々なメリットがあります。
しかし、一方でデメリットもあるのです。
具体的にどのようなデメリットがあるのか、解説します。
元本割れのリスクがある
変額保険のデメリットとしては、まず元本保証がないため元本割れのリスクがあるという点が挙げられます。
運用成績次第では、保険金や解約返戻金が払込保険料の総額を下回ることもあるのです。
運用の環境は、経済情勢が変化して金利が変動したり、為替変動の影響を受けたりするため、複雑な要因で変化します。
どのようなタイミングでどう変化するのか、その特性を理解しておく必要があるでしょう。
手数料がかかる
変額保険を運用している特別勘定は、保険会社が運用を行っているのですが、積立金からは所定の手数料が差し引かれています。
運用関係費として、手数料が引かれるのはデメリットでしょう。
また、特別勘定を他の特別勘定へと変更するスイッチングが可能な商品もあるのですが、その際も積立金からスイッチング手数料が差し引かれてしまいます。
変額保険に加入するのであれば、こういったデメリットも理解したうえで行いましょう。
利回りはあまり高くない
変額保険を資産運用として考えた場合、利回りの面では一般の保険よりは高いものの、投資信託と比べるとあまり高くはありません。
なぜ投資信託より低いのかというと、変額保険には最低保証があるからです。
投資信託は、投資した結果がどうなろうとも、保証は一切ありません。
元本割れのリスクがあるのは当然ですが、極端な話、資産がいきなりゼロになることはまずありえないものの、絶対に起こらないというわけではないのです。
一方、変額保険にも元本割れのリスクはあります。
しかし、保険という形なので、死亡時の保険金がゼロになってしまうことはありません。
変額保険には、いくら運用実績が悪かったとしても、死亡保険金などには最低保証額があるのです。
最低保証額は、基本保険金額と言います。
基本保険金額に、運用実績による変動保険金額を加えたものが、実際の保険金となるのです。
基本保険金があるため、変額保険は保険金がゼロになるということがないのです。
ただし、基本保険金だけでは、払い込んだ保険料を下回ってしまいます。
必ずプラスになるというわけではないので、注意してください。
デフレリスクに弱い
変額保険のメリットに、インフレリスクに強いという点があります。
しかし、一方でデフレには弱い、というデメリットもあるのです。
デフレは、物価が下がってしまう状態で、主に不景気の時に起こります。
デフレが起こった時は、資産の価値が上がります。
今までは1万円だったものが8千円になった場合、資産の価値は単純に計算して25%増えることになります。
つまり、100万円の預金がある場合、デフレが起こった時はデフレが起こる前の125万円に近い価値がある、ということになります。
資産価値が増えるのはいいことですが、資産運用においてはデメリットとなるのです。
デフレが起こるということは、市場に出回る貨幣が少なくなるということです。
貨幣の流通量が少ないと、企業の売り上げも減少してしまうため、株価なども軒並み下落してしまい、資産運用の実績も悪くなってしまうのです。
つまり、デフレになると変額保険の変動保険金の部分が減少してしまう可能性が高く、死亡保険金や高度障害保険金、もしくは解約返戻金などで受け取ることができる金額が少なくなってしまうというリスクがあるのです。
変額保険は、デフレになっても保険料が安くなるわけではないため、運用実績が悪化した場合は払込保険料の総額より、受け取ることのできる保険料の方が少なくなってしまう可能性もあるのです。
変額保険への加入はデメリットを理解したうえで
変額保険は、一般の保険とは異なる点がかなり多いため、同じ保険だと思って加入してしまうと後から後悔することになるかも知れません。
一般的な生命保険とは、システムが大きく異なるのです。
一般の生命保険は、支払う保険金と加入期間、死亡時や高度障害時に支払われる保険金や、解約返戻金の金額などが契約した際に決まっています。
払込保険料より保険金や解約返戻金の方が多くなるか少なくなるかは、最初にわかっているのです。
しかし、変額保険の場合は支払う保険料や加入期間は最初にわかっているものの、死亡保険金や高度障害保険金、解約返戻金などの金額は決まっていません。
加入期間中の、資産運用の結果によって正確な金額が決まるのです。
最低保証金額は決まっているものの、いざという時にはいくらもらえるのか正確な金額がわからなければ、他の生命保険にも加入するべきか、保険金だけで安心できるのかの判断が難しくなるでしょう。
特にデメリットを理解せずに加入したことで、予定より保険金などが少なくなっているという苦情を申し立てる人もいるため、しっかりと理解したうえで加入することをおすすめします。
まとめ
変額保険は保険料に対して受け取る保険金などが多くなる可能性もあるのが魅力なのですが、運用成績次第ではかえって受け取る金額が少なくなってしまうことがあります。
それでも、保険金については基本保険金額を下限としているため、それ以上少なくなることもありません。
インフレにも強いため、景気変動への備えにもなります。
変額保険に加入する際は、メリットとデメリットをしっかりと把握した上で加入しましょう。