保険というのは、通常であれば万が一の事態に備えるためのものです。
しかし、近年は節税保険というものが登場していました。
そして節税保険は、2022年に初となる行政処分の対象となったのです。
節税保険とは、いったい何なのでしょうか?
なぜ、行政処分されたのかを解説します。
節税保険とは?
保険には、様々な種類があります。
生命保険は死亡時に備えた保険、医療保険は医療を受ける時に備えた保険、火災保険は火災に備えた保険など、保険の名前を聞くとおおよそ何の備えになっているのかがわかります。
では、節税保険とは何なのでしょうか?
保険に加入していると、保険料控除を受けられるため、節税になると言えばなるのですが、それが主目的というわけではありません。
節税保険は、途中解約をすることで保険料の全額を企業が損金として計上することで、節税になるという保険の売り方です。
2017年春に登場してから、中小企業の経営者を対象として、保険の加入が節税になるという売り方が過熱していたのです。
とにかく契約を取るのが優先という姿勢は、保険業界全体の風潮です。
そして、節税保険は契約者側の需要も満たすものでした。
両方の思惑が合致したことで、節税保険は多くの経営者が契約しました。
しかし、あまりに過熱しすぎたことで金融庁は実態調査に乗り出し、国税庁でも改正によって封じようとしていました。
そして、2019年には法人税基本通達が改正されたのです。
改正の動きが出た時点で、保険会社は対象となる可能性の高い商品については、販売を自粛するなどの対応をしていました。
しかし、完全になくなったわけではないのです。
改正内容としては、まず定期保険等の保険料が、期間経過に応じて損金に算入されることとなりました。
また、保険料に多額の前払金の保険料が含まれている場合は、保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%超、契約者が法人、被保険者が役員もしくは使用人である場合に限り、最高解約返戻率に応じて損金に算入できます。
また、定期保険において保険料の損金算入時期等に関する取扱いが定められている個別通達は、改正と同時に廃止されています。
改正前の契約については、改正の影響を受けず従来通りとなっています。
初の行政処分の内容は?
節税保険において、初めての行政処分が下されたのは2022年7月でした。
「行き過ぎた節税保険」として、保険業法に基づいた業務改善命令を出されたのです。
処分を受けた保険会社では、業務改善計画の提出と実行を命じられ、3カ月おきに進捗を報告することを命じられています。
前述したように、節税保険は国が封じ手を講じて、改正も行ったことで多くの保険会社は販売を自粛していました。
しかし、行政処分を受けた保険会社はいくつかの問題点が浮上したことで、業務改正命令を出されることとなったのです。
改正後も、節税効果を強調して本来の保険の趣旨から逸脱して、組織的に顧客を募集していたため、悪質性が高い営業手法だと判断されたのです。
違法ではないものの、問題視される保険でした。
他にも数社が、改正によって封じられた保険の代わりに、抜け穴をつくように他のプランを用意していました。
初の行政処分を受けた保険会社を皮切りとして、それ以外にも何社かが保険業法に基づいて報告徴収命令を出されています。
現在も、改善命令を出される保険会社が増えています。
金融庁と国税庁が協力して、節税保険を食い止めようとしているため、今後は節税保険やそれに類する保険が生き残るのは難しくなるでしょう。
まとめ
保険会社が競うようにして契約を取っていた節税保険は、中小企業の経営者が保険料を損金として計上できるというメリットから、契約していました。
しかし、国税庁と金融庁が協力して、節税保険の広がりを食い止めて、今後契約が増えないように食い止める方針を打ち出しています。
プランを変えて、近い保険を新たに発売した保険会社もあるのですが、保険の趣旨から大きく外れた保険が生き残るのは難しいでしょう。