日本の生命保険料は、他国と比べて高額だと言われています。
その理由の1つとして、原価が高いという点が挙げられています。
原価が高いというのは、どういう意味なのでしょうか?
また、実際にどのくらい高いのでしょうか?
生命保険の原価について、解説します。
生命保険の原価とは?
生命保険は、毎月一定金額の保険料を支払い、死亡時に保険金が支払われる保険です。
この保険金を支払うための原資として、保険料の一部をプールしておきます。
プールされる保険料が、生命保険の原価となるのです。
生命保険の保険料は、原価と付加保険料に分けられます。
原価は、保険料から手数料やインセンティブを抜いて、純粋に保険のために使われる分なので、純保険料とも呼ばれます。
日本の生命保険が高い理由として手数料が高いという点もあるのですが、そもそも保険金の額に対して原価も高いのです。
保険はギャンブルと同様のものなので、胴元である保険会社はできるだけ損をしないことを考えているからです。
保険に加入した人が亡くなるまでの間は保険料を保険会社に支払いますが、亡くなった場合は保険会社が保険金受取人に保険金を支払うことになります。
保険料から手数料を差し引いた合計が、保険金より多いか少ないかで保険会社の損得が変わってくるのです。
例えば、毎月保険料を1万円支払っていて、死亡時の保険金が100万円だとします。
原価が7000円として単純に計算すると143ヶ月、約12年で保険金を賄えるようになります。
保険会社が保険料と保険金のバランスを考えるときは、確率論を使っています。
保険数理ともいい、滅多なことでは損をすることがないように計算したうえで決めているのです。
もちろん、むやみに保険料を高くすると、誰も加入してくれません。
保険は、高度な確率の計算をしたうえで損がないような仕組みを組み立てている、高度な商品なのです。
保険の原価を発表した生命保険会社
日本の保険会社の中には、保険の原価について公表した会社もあります。
2008年、日本で初めて原価を発表した生命保険会社があり、業界には激震が走りました。
保険料は純保険料と付加保険料に分けられるのですが、今までそれを公表した保険会社はなかったのです。
保険会社が経費としてどれだけの付加保険料を取っていたのかを知られないようにしていて、開示はタブー視されていたのです。
家電製品や車などの工業製品も、原価は公表していません。
そのため、保険についても公表する必要はないと考えられていたのですが、開示した保険会社は見たり触れたりできない保険だからこそ、正確に比較できるよう原価の公表に踏み切りました。
また、ネット保険なので自社の料金が安いことを活かし、競争を進めることも目的でした。
付加保険料には、かなりの差があったのです。
アメリカの保険会社では、純保険料や付加保険料が公表されています。
ビジネスライン別の純保険料収入ランキングも公表されているため、隠すことなく明らかになっているのです。
現在、日本の生命保険会社は、収益が悪化しつつあります。
その中で、原価の公表に踏み切ることができない会社は多いでしょう。
しかし、すでに一社が公表されている以上、その比較でおおよその原価はわかってしまいます。
詳細が隠されている保険業界も、これからは保険料の内訳などを明らかにしていくことを考えなくてはならないでしょう。
今後、保険に加入する時は内容をしっかりと比較して決められるようになるべきでしょう。
まとめ
日本の保険料が高いのは、保険会社の運営資金となる付加保険料が高すぎるから、と言われています。
しかし、もう一つの原価である純保険料も高いと言われているのです。
多くの保険会社は、保険料の内訳がどうなっているのかを公表していません。
公表した保険会社もあるのですが、他の保険会社はそれに追随しなかったのです。
今後、公表する保険会社が増えた場合は、内容を明確に比較しながら保険を選べるようになるでしょう。