日本の保険の歴史

保険の知識

保険には、生命保険や医療保険、火災保険、損害保険など、様々な種類があります。
そもそも、保険というのはいつから始まったのでしょうか?
世界の保険は非常に古い歴史があるのですが、日本の場合はそこまで古い訳ではありません。
日本の保険の歴史について、解説します。

日本の保険の歴史は明治時代から

日本で初めて保険という考え方を紹介したのは、慶應義塾大学の創始者として有名な福沢諭吉です。
著書の「西洋旅案内」の中で、西洋の近代的な保険を紹介したことによって、日本でも保険という考え方が生まれました。

ただし、「西洋旅案内」が紹介される以前から、日本においても冒険貸借のような制度が欧州やアジア諸国との貿易で採用されていたといわれています。
冒険貸借は、紀元前300年頃に地中海貿易で登場したといわれる、海上保険の原型のようなものです。

1881年(明治14年)に阿部泰蔵という福沢諭吉の門下生が、日本で初めての保険会社となる有限明治生命保險會社を創設しました。
明治生命は、現在も明治安田生命と名前を変えて存続しています。

明治生命の創設を皮切りとして、現在の朝日生命である帝国生命が1888年(明治21年)に、日本生命は1889年(明治22年)に設立されています。
1893年(明治26年)から1898年(明治31年)にかけては、保険会社が40社以上も設立されました。

また、1887年(明治20年)には、日本初の火災保険企業である、東京火災保険会社が設立されました。
海上保険は、1893年(明治26年)に設立された帝国海上保険が始まりです。

保険の重要性が少しずつ広まっていき、1892年(明治25年)には生命保険会社が全国各地に設置されています。
保険の精神は相互扶助で社会に役立つ仕組みなのですが、当時は人の命を金儲けに使うと考える人も多くいました。
そのため、批判も多かったのです。

保険会社が増えたことで、法整備も進められていきました。
1900年(明治33年)には、保険業法が設立されて政府による取り締まりが開始されました。
保険業法は、ドイツの保険監督法という法律を参考にして制定されています。

保険の発展

生命保険が広く浸透し、理解されるようになったのは、日清戦争や日露戦争の戦死者の遺族に保険金が支払われたことがきっかけでした。
その後、医療費が増加したことによって、生命保険に医療保険を組み込んだ商品が増えていきました。

1973年(昭和48年)以降は、外資系の保険会社が参入し始め、がん保険も広まっていきました。
その後は規制が緩和され、損害保険会社やネット通販型の生命保険会社も市場に参入し始めたことで、現在の保険は数えきれないほど多くの選択肢があります。

先進医療や臓器移植などの医療費をカバーすることを目的とした医療特化型や、病気などで入院した際に収入が途切れるのをカバーする就労不能保険、老後の生活に備えつつ死亡時に保障を受けられる個人年金、子どもの将来の学費を準備する学資保険などが、代表的な保険です。

現状の保険は、行動経済学によると選択肢が多すぎて決断が困難な状態となっています。
確かに、選択肢が多すぎると決定的な理由がない限り悩んでしまうでしょう。
だからといって、保険に加入しないままでいるのも不安です。

保険を選ぶことができない場合は、FPに相談してアドバイスをもらい、決定することをおすすめします。
FPは保険の専門家なので、希望する保障を伝えることで、適切な保険の種類を教えてもらえます。

世界の保険の歴史

保険というのは、日本が発祥ではありません。
日本の保険の歴史よりも古くに、世界では保険が誕生しているのです。
世界の保険は、いつが始まりなのでしょうか?

保険の始まり

世界の保険の歴史は古く、最初は紀元前3200年から紀元前4世紀後半の、世界最古の文明であるオリエント文明まで遡ります。
当時に行われていた交易に伴う資金の貸し借りが、保険の始まりと言われています。

その後、紀元前300年ごろに冒険貸借が始まりました。
冒険貸借は海上保険の原形と言われるもので、船や積み荷の持ち主が金融業者からお金を借りて、トラブルなく航海を終えたら利息を付けて返済し、トラブルが起こった場合は返済が免除となる、というものです。

日本の昭和前期の保険市場

日本で保険会社が設立されてから20年余りが過ぎた1900年代になると、保険会社は国内に留まらず海外にも進出しました。
海外に目を向けた保険会社ですが、すぐ後に日本で大きな災害や事件が発生しました。

1923年には、首都圏に壊滅的な被害をもたらした関東大震災が発生しています。
さらに、1927年には昭和金融恐慌も起こりました。
また、世界大戦も2度にわたり行われています。

日本の保険会社は、様々な混乱が起こった日本の中でも活躍し、驚異的なスピードで復興を遂げています。
戦後の経済復興の中で、さらに強力な事業基盤を確立するに至りました。

災害や事件が終わった後は政府がデフレを起こし、経済の回復に努めました。
また、日本の保険会社は成長したといいましたが、成長を遂げられたのは一部の保険会社であり、経済が低迷したことで倒産した保険会社も多かったのです。

日本では、保険会社ができた当初は死亡表がなかったため、英国保険会社の物を使用していました。
日本独自の死亡表が初めてできたのは、1889年のことでした。

保険業法の影響

日本で保険業法が施行されたのは、1900年のことでした。
監督が強化され、経済活動が不振となっていたことで、投機的な保険会社は閉鎖を余儀なくされています。

また、海外から進出していた生命保険会社のマーケットシェアは減少し、一時は15%だったのが1%になっています。
なお、外国保険会社は第2次世界大戦が勃発した時点で、1950年まで日本での事業が終了することとなりました。

日本の火災保険の歴史

日本では、生命保険に加入する人が多いのですが、家を持つ人は火災保険にも加入しているでしょう。
日本の火災保険の歴史について、解説します。

火災保険の始まり

日本の火災保険が始まったのは、江戸時代末期と言われています。
江戸時代の火事といえば、火消しが担っていました。
火事を発見したら半鐘を鳴らし、火事現場では延焼を防ぐために周囲の建物を取り壊すこともありました。

海外から保険という考え方が入ってきたことで、日本でも火災保険について悩む人が増えました。
1888年に、東京火災保険会社が始めた火災保険が、日本で初めての火災保険と言われています。

日本の火災保険誕生の裏側

火災保険について広めたのは、ドイツ人のパウル・マイエット博士です。
日本では水火災の被害額が大きいのに、なぜ保険がないのかと嘆いたことで、当時の参議兼大蔵卿を務めていた大隈重信が共鳴し、家屋数等の調査を開始しました。

しかし、国で調査を行ったにも関わらず、国ではなく民間が行うべきという方針が発表されます。
1888年に東京火災保険会社が始め、1891年には明治火災、翌年には日本火災が創業しています。

ちなみに、今の火災保険には地震保険もついていることが多いのですが、地震保険は火災保険よりも後に誕生しています。
地震保険の最初は、1964年に起こった新潟地震がきっかけとなって、1966年に地震保険という制度が発足しました。

まとめ

日本において、明確に「保険」と名付けられたものが登場したのは明治時代です。
それ以前にも共済を目的としたものがあったのですが、保険とは若干仕組みが異なりました。
近代の保険は福沢諭吉によって広められ、阿部泰蔵が創設した明治生命から始まったものですが、発展した結果、保険の種類が増えて選択が困難になっています。
保険の選び方が分からない場合には、FPに相談するといいでしょう。

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