保険には、死亡時にいくら支払われると決まっている終身保険や定期保険などがあるのですが、それとは別に受取金額が定まっていない変額保険というものもあります。
わざわざ額が決まっていない保険を選ぶ意味が分からない、という人もいると思います。
変額保険はどのように活用すればいいのか、解説します。
変額保険とは?
まずは、変額保険がどのような保険なのかを解説します。
変額保険は、死亡保険金や満期保険金、解約返戻金がいくらになるのかが定まっていない保険で、運用実績によって金額が決まる保険です。
一般的に、保険は保険料を保険会社に支払って保険会社がそれをまとめて運用し、資金を増やしつつ何かあった時には保険金を支払う、という仕組みになっています。
安全性を重視して、国債や社債などの公社債を中心に投資していることが多いでしょう。
通常の保険は一般勘定と言われるもので運用しているのですが、一般勘定とは分けられている特別勘定というものがあります。
特別勘定は、株式や投資信託、債券などで運用するもので、リスクがあるため一般勘定とは区別して運用しています。
変額保険というのは、保険料を特別勘定で運用する保険です。
運用成績によって、保険金や解約返戻金の額が変わってくる保険商品のことで、リスクはあるものの他の保険よりもリターンが大きくなるのが特徴です。
変額保険は、長期間保有することで他の保険よりも返戻率が高くなり、受け取る解約返戻金や満期保険金が多くなる可能性があるのが特徴です。
もし払込保険料の総額よりも受け取る金額のほうが大きくなった場合は、所得税や住民税を納める必要があります。
注意したい点は、運用する金融商品が元本保証のない株式や投資信託、債券が中心となるため、元本割れのリスクがあります。
そのせいで、運用成績によっては受け取る金額が支払った保険料の総額よりも少なくなってしまうこともあり得るのです。
ただし、死亡保険金だけは基本保険金額という最低保証金額が定められているので、少なくとも一定金額は受け取ることができます。
また、保険の種類によっては満期保険金がないので、注意しましょう。
変動保険には、「終身型変額保険」「有期型変額保険」「変額個人年金保険」の3つがあります。
どのような違いがあるのか、解説します。
有期型変額保険の特徴
有期型というのは、一定期間加入することが決められている変額保険で、5年や10年などの期間が経過すると満期になります。
その時点で、保険の契約は終了となります。
何事もなく満期を迎えたら、運用成績に応じた満期保険金を受け取ります。
また、満期になる前に被保険者が死亡、もしくは高度障害状態となった場合は、保険金を受け取ることとなります。
イメージとしては養老保険に近く、その金額が変わるタイプのものと思っていいでしょう。
満期保険金は、運用成績によって変化しマイナスになることもあるものの、死亡保険金や高度障害保険金については一定額が定められていて、それより下がることはありません。
終身型変額保険の特徴
終身型と言われるタイプは、保険が一生涯継続します。
解約するまでは継続して、解約したときは解約返戻金が支払われます。
終身型の場合も、運用生成期によって解約返戻金の額は変動し、払込保険料を下回ることもあります。
しかし、この場合も死亡保険金や高度障害保険金に関しては下限が定められていて、それより少なくなることはありません。
払込保険料の総額を下回ることもないため、安心できるでしょう。
変額個人年金保険の特徴
終身型には、変額個人年金保険というものもあります。
終身、もしくは確定の年金形式で保険金を受け取るタイプの保険で、運用結果に応じて年金原資が増減することになります。
変額個人年金保険では、年金の他に死亡給付金や高度障害給付金も受け取ることができる可能性があります。
上記2つも、年金と同様に運用結果で増減します。
年金額と死亡給付金等は、保険の商品によって最低保証金額、下限が定められているものと決まっていないものがあります。
下限がない場合は、将来の年金額に大きく影響するため、必ず確認してから加入しましょう。
変額個人年金保険には、特定勘定で運用しながら年金を受け取ることができるものや、運用実績次第で最低保証金額が引き上げられるものなどがあります。
定額個人年金と何が違うのかを確認したうえで、加入しましょう。
変額保険のメリットは、インフレリスクに強いという点です。
物価が上がれば、運用実績も上がりやすくなるため、インフレに応じて支払われる保険金なども増えていくのです。
しかし、契約時や資産運用の途中、解約時には様々な費用が掛かります。
また、財産を預けて運用してくれる投資信託と比べると、利回りが悪いという点もあります。
何より、運用実績次第では損をする可能性があるというのがデメリットでしょう。
変額保険の賢い活用術
変額保険を賢く活用するには、どうしたらいいのでしょうか?
変額保険の賢い活用術について、解説します。
ただし、説明するのはあくまでもおすすめの方法であり、活用方法は1つではないので、自分なりの活用方法を考えてもいいでしょう。
変額保険は、運用実績に応じて保険金などの受け取ることができる金額が変動する保険ですが、死亡保険金は基本保険金額という最低保証があるので、一定以下に下がることはありません。
保険と同時に、資産運用と貯蓄をしたいという人であれば、有効に活用できます。
例えば、毎月生命保険に1万円を支払い、別に証券会社で1万円積立投資をして、さらに毎月2万円ずつ貯蓄もしているという場合、3か所に支払いをすることになるため、非常に煩雑となるでしょう。
しかし、変額保険で死亡した際の保障と資産運用、貯蓄をするという場合は、支払先が一か所になります。
契約内容にもよりますが、毎月支払う金額も調整しやすいでしょう。
また、死亡保険金を受け取ることで、相続税対策にもなります。
相続の際は、相続する財産の額に応じて相続税が課されるのですが、財産に現金や預金が少なく不動産が多い場合は、相続税を納税する準備ができないこともあるのです。
例えば、相続する財産が不動産で相続人が1人、不動産の価値は1億円の場合、基礎控除額は3,000万円に相続人の人数ごとに600万円なので、3,600万円となります。
課税価格は6,400万円、税率は30%で控除額が700万円なので、相続税額は1,220万円となります。
不動産は、地域によって非常に高額となります。
東京23区内であれば、1坪が数千万円となることもあります。
23区内の一戸建てや、広い部屋、新築のマンションを相続する場合は、1億円を超えることも珍しくないでしょう。
数千万円の相続税を納めるのは、難しいという人もいるでしょう。
不動産を売却して用意しようにも、相続税は10カ月が法定納期限となっているため、すぐ売れなければ間に合わないかもしれません。
変額保険に加入していれば、相続財産とは別に死亡保険金が支払われます。
死亡保険金の額にもよりますが、相続税の納付の一助となるのは間違いないでしょう。
他の生命保険でも同様に保険金は受け取ることができますが、変額保険の場合は地価の高騰に合わせて保険金額が増えるというメリットもあるのです。
不動産の値動きは、景気と深い関わりがあります。
景気が良くなれば不動産価格も上がり、不景気になると価格は下がりやすいのです。
変額保険も、好景気なら運用成績が良くなり、不景気なら運用成績が悪化しやすくなります。
地価が下がっている時は、相続税の額も下がるため納めやすくなるでしょう。
好景気で地価が上がっている時の相続税は高額になるため、納めるのが大変です。
変額保険なら、支払われる死亡保険金の額も増えるため、相続税を納付しやすくなるでしょう。
相続税対策としては終身生命保険を選ぶ人も多いのですが、終身変額保険のほうが終身保険より保険料がリーズナブルなので、加入中の負担が少なくなります。
相続税対策としては、非常に有用です。
変額保険を活用するのであれば、定年退職金の一部など、多額の余裕資金を運用するというのがおすすめです。
まとまった金額の運用として活用し、万が一減少してもあまり困らない資金の活用方法としてください。
一般的に、多くの生命保険は毎月保険料を支払うのですが、変額保険の場合は一時払いが可能です。
一時払いは、加入期間中の保険料をまとめて支払う方法です。
一時払いにすると、定期的に支払うよりも保険料の総額が安くなります。
まとめて支払うと、保険会社は運用できる資金が増えるため、運用成績も良くなりやすいのです。
ただし、一時払いにした場合、生命保険料控除は支払った年1回だけとなるため、節税効果が少なくなる点に注意しましょう。
保険料をいったん預けて、定期的に支払われる全期前納払いという方法もあるので、どちらがいいかよく検討してください。
変額保険の運用先を選ぶ時は、過去の実績が良好なところを選びましょう。
特別勘定の「設定来の騰落率」に注目して、リーマンショックやコロナショックなどの騰落もチェックしましょう。
大暴落が起こった時はどんな運用先も実績が悪化することは避けられませんが、過去の成績が好調ならいずれ復活します。
また、危機を乗り越えた後は長く伸びていく可能性が高くなります。
優秀な運用先であれば、大暴落が起こった際に素早く見切り、損失を最小限にしているかもしれません。
さらに先読みができれば、大暴落後の復活で大きく投資し、利益を伸ばしているでしょう。
実際に運用が優秀だったかどうかは、1つの運用先だけを見ていてもわかりません。
複数の運用先を並行して確認し、他のところが暴落している時に持ちこたえているか、値動きが上下に激しくないか、といった点をチェックしましょう。
成績が右肩上がりになっている場合でも、必ずどこかで落ち込んでいるところがあります。
落ち込むときがあるのは当然なので、落ち込んでから復帰する力を見ることが大切なのです。
変額保険には、基本保険金額という最低保証金額が決まっているものの、上限額が決まっているわけではありません。
運用先の成績次第で、際限なく増えていくのです。
せっかく保険金や解約返戻金の額が決まっていない変額保険に加入するのであれば、少しでも受け取る金額が多くなるように運用先を選びましょう。
選び方に失敗すると、元本割れの可能性が高くなるので、注意しましょう。
最低でも10年以上の長期間加入して、短期的な実績に一喜一憂しないことを心がけてください。
短期的に暴落しても、長期的に見るとそれを弾みとして好成績になるかもしれません。
また、担当者を選ぶ際は、自分で変額保険に加入している人がおすすめです。
自分が加入していれば、メリットやデメリット、運用法なども問題なく教えてもらうことができるでしょう。
まとめ
変額保険は、加入中に預かった保険金を運用して利益を出すことを目的とした保険で、成績次第で満期保険金や解約返戻金、死亡保険金の金額が変わります。
運用では利益が出ることが多いため、通常の保険より多くの保険金を受け取ることも可能ですが、確実ではありません。
変額保険については、活用術もよく考えた上で加入することをおすすめします。